「もぉいいだろう?」
「待って待って!もうひとりぐらい聞こうよ」
「聞いてどうする」
苛立っているような、呆れるような表情で立ち上がりかけた千秋を引き止めている所へ、ある人が声をかけてきた。
「皆さんで何をしているんですか?」
「ばっ…来るな、ユキ!」
「ユキ!いいところに。ちょっとこっち来て!!」
「はい?」
「飛んで火にいるなんとやら…やね」
三者三様の態度に首を傾げつつも、こちらに近づいて来たユキに、さっきの芹沢くんと同じ質問を投げかける。
けれど、芹沢くんと違ってユキは暫し考えた後、口を開いた。
「…そうですね。僕は…レアはちょっと苦手なので、ミディアムでしょうか」
「なるほど、ほながええってことになるね」
「え、ええっ!?あの、そ、そういう意味では…」
「やったー!1ポイント!」
「勝負じゃねぇだろ」
「八木沢くんはが好みやったんやねぇ」
「と、土岐くん…」
どこからか戸惑った声をあげるユキに気づいたのか、至誠館の皆もこちらにやって来た。
「あー、ちゃん何やってんの〜?」
「どうしたんすか、部長」
「…どんどん集まりやがって、馬鹿ばっかりか」
呆れている千秋をよそに、今度はあたしではなく、蓬生が二人に質問してくれた。
「な、お二人さん。レア、ミディアム、ウェルダン…お好みはどれ?」
「え?」
「…なんすか、いきなり」
訳がわからないと言った顔で首を傾げる新くん。
どういうことなのかと、ユキへ視線を向ける火積くん。
普段であれば助け舟を出すであろうユキは、赤くなった熱を冷ますよう顔をあおぐのに一生懸命だ。
「お答えは?」
「早すぎるよー、土岐さん。もう一回言って!もーいっかい!」
誰に対しても素直な新くんは可愛いなぁなんてのんびり思いながら、軽く舌打ちが聞こえた方向へ視線を向けると、予想通り千秋だった。
…うわー、めっちゃイライラしてる。
とはいえ、あたしと蓬生が見えない所で手を組んでしまったところから逃げてもろくなことにならないのは、既に幼少期から彼も体験済。
もう暫くは大丈夫だろうと、視線を前に戻した。
「しゃあないなぁ…レア、ミディアム、ウェルダン…お好みは?」
「えーっとね、オレ、どれでもみんな好き〜♪だってさ、お肉は全部美味しいもーん」
「水嶋くんはええ子やねぇ」
「えー?そうかなーでもありがとー」
「じゃあ、火積くんは?」
「え……俺、ですか」
「うん」
じぃーっと彼の顔を見つめて答えを待っていれば、徐々に頬が染まり…ぽつりと呟いた。
「その、う…ウェルダン」
「あ、千秋が1ポイント」
「…ま、当然だな」
「なんや、レアは人気ないなぁ」
「え、え、え、なにそれ、どういう意味?」
「あのね、蓬生がレアで、あたしがミディアム、で…千秋がウェルダンなの」
「は?」
「???」
「そんな説明でわかるやつがいるか」
「えーっ、それならオレ、ミディアムが一番好きー!ちゃんがいい!」
「なっ…水嶋!」
あたしを抱きしめようと手を伸ばして来た新くんの襟元を火積くんが押さえる。
「ぐっ!!」
「いちいちそういうことするんじゃねぇって何度言えばわかる!!」
「なにさー、東金さんを選んだ火積先輩が止めるなんて酷いよー」
「なっ!?」
「さーて、次は誰が来るかな〜♪」
「せやね…そろそろレアもポイント取りたいとこやわ」
「………阿呆」
さぁ、この謎のポイント合戦!
最終勝利者は誰だ!?